本日ご紹介するのは、
『税務調査で重加算税を課されたのに判決で課されなくなった』です。
今回は、平成9年12月9日の判例を基にしております。
判決までの簡単な概要は以下のとおりです。
相続税について、相続財産に算入すべき被相続人名義の貸付金が相続人の代表取締役となっている会社にあったが、これを相続財産に算入せずに申告を行った。
後日税務署の調査があり、この貸付金が相続財産に該当するため更正処分を行った。(差額の相続税+過少申告加算税+重加算税が課された)
相続人がこれを不服として、貸付金が相続財産に該当しない旨国税不服審判所に訴えたが、認められなかった。
以上です。
文章にしてみると簡単ですが、結論に至るまでには、相続人及び税務署がそれぞれの主張を戦わせています。
今回は重加算税に焦点を当てているので、その話だけを取り上げます。
結果的に貸付金は相続財産に含まれることとなり、過少申告加算税は支払う事となったのですが、重加算税については、仮装又は隠ぺいが認められなかったため取り消されることとなりました。
この判決では、「過少申告となる事実=仮装又は隠ぺい」とはならなかったのです。何も行動を起こさなければ重加算税が課税されていたところ、それを認めない判決が出ました。
税務調査があった場合には、税務署から言われたとおりに重加算税を払う会社があります。
税務調査官も重加算税は人事考課に非常に大きな影響を与えるので、正しいかどうかはともかくとして、「重加算税をかけたい」という気持ちがあることも事実です。
しかし、何度も繰り返しますが、「重加算税を課すという事は、=仮装又は隠ぺいの事実がある」ということが大前提です。
その大前提を立証しないままに重加算税を課すことが非常に多いのです。ちなみに、平成22年度のデータでは、重加算税を課した税務調査は、全体の約20%という高い割合になっています。
このすべての案件が、重加算税となる前提を満たしたものなのかと問うと、はたして疑問です。税務調査官に言われるがままに受け入れた案件も相当あるのではないでしょうか?
しかしそれでは、会社のお金が不必要に流出してしまいます。皆さんの会社でも、同様の事例に巻き込まれた際には、上記の判決などを根拠に、しっかりと反証してください。
(重加算税)
国税通則法第六十八条
第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(同条第五項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
2 第六十六条第一項(無申告加算税)の規定に該当する場合(同項ただし書又は同条第五項若しくは第六項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の四十の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
3 前条第一項の規定に該当する場合(同項ただし書又は同条第二項若しくは第三項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者が事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づきその国税をその法定納期限までに納付しなかつたときは、税務署長は、当該納税者から、不納付加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る不納付加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を徴収する。
4 第一項又は第二項の規定は、消費税等(消費税を除く。)については、適用しない。